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Episode-29 呪われた血

ネタバレありです!

まさしく「呪われた血」
サヤの血のことです。
そうです。イレーヌは助かりませんでした。
やはり、ディーバでの力造られたモノは、サヤの血では助けられないようです。
カイの「イレーヌを助けてやってくれ」
と請われて、実際にソーンが進行していく姿を見て、
サヤは、
「私の血は翼手を殺すから」
とためらいます。

なんだ、わかってんじゃん~

って思いました。わざわざこんなシーンを挟むなら、もしかして助かる?
一瞬期待したんですがね~

甘くはありませんでした。
サヤの血を飲み込んで引いたかに見えたソーンは、次の瞬間激しく拡大し、印象的なエメラルドグリーンの瞳は白く石膏のようになり、全身まで石膏化して首の部分で割れたデスマスクがサヤの手に。
これはなかなかにショッキングなシーンでした。

シフのソーンを収めるに必要なものはディーバの血でしかないことが明らかになったわけですが、シフはサヤたちと共にディーバと戦うことを拒みました。
血を得てソーンを避けて、永遠に生き長らえることの虚しさに気がついたようです。
ソーンが表れ死を迎えること、それが生物としての寿命であることを理解した彼らには、戦い奪い取ることは虚しいことなのでしょうか。
どうやらシフはこれにて物語から退場のようです。

これで今日の話は終わり

というわけではなく。

まずは村岡&謝花ペアの処遇。
サヤの謎が知りたい村岡に対して、カイを守りたい謝花ねーさん。
「あんなのを見たら」
とイレーヌの死がショックだったようです。いい子だな~
サヤが何ものなのか教えてくれないと写真をばらまくって。
謝花ねーさんのきっぷのいい啖呵ったら。
ただのわがまま娘かと思ったら。
いいじゃん。ねーさん。
謝花ねーさん株急上昇。

ハジとリクのサヤのシュバリエコンビ。
リクはあいかわらず無邪気で、ショタ趣味なねーさん狙いですか?
回を重ねる毎に幼くなる気がするのですが、私の気のせいでしょうか?
「自分を嫌いにならないで」
リクのサヤへの一言は、殺し文句ですね。
若いのに、やるなー。ハンカチを貸してあげるのもgood
でも、泣き出したサヤを包むように抱きしめて泣かせてあげるハジの包容力にはかないませんね。

ハハハ……

出たっ!

狙ってますね。
好きだなー。こういう、あざといほど狙いすましたシーン。
もう、わくわくします。
これがないとね。BLOOD+は。

ディーバの側の動きもあわただしく、翼手を作ってディーバが何を企んでいるのか。
サヤの謎とは別のところで物語が動きそうです。

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Episode-28 限りあるもの

サヤはソーンの進行するイレーヌを救うことができるのか?
待て、次号。

なとこで終わった27話。
楽しみにしていた分、期待を裏切られて、がっかり。
今回は狂言回し(っていうほど二人の登場は面白い訳じゃないけど)な新聞記者村岡を尻にひくスポンサー謝花さまがいよいよカイと再会する話でした。
今まで散々ニアミスを続けましたからね。
(細かい突っ込みですが、図書館にマイクロリーダー1台ってどんなもん? パリの大きな図書館っぽかったけど、国立図書館クラスならマイクロ閲覧室ってあるんじゃない? 家系図は地元の古文書館が持っててそのくらいの規模なら日本ではマイクロ1台って普通だけどさ。動物園ってパリだっけ? もっと田舎なイメージがあったのですが)
そんな誰も気にしないようなツッコミはともかく。

謝花さまに頭が上がらない村岡さんも、やるときはヤル!
視聴者代表のように、繋がらない謎の断片をサヤたちに投げつけてました。
落ちこぼれ新聞記者なのは能力がないからっていう訳じゃなさそうです。
けっこう格好良く見えます。

サヤとカイのすれ違い。
仮にも兄弟なのだから、と思うと胸が痛いです。
やはり、
「リクがいなくなったら独りぼっちになっちまう」
あれはね、サヤにしたらショックでしょう。
たった一つサヤに残された、「戦い、守る」ということ。
サヤに残された唯一のことで、でもかたくななまでに言い張るのは、自信のなさ、ゆとりのなさ、心の揺れの表れなのでしょう。
ほんのちょっと、またか、とイライラしちゃうのも確かです。

一方、「変わらない」ことをかたくななカイ。
帰る場所を作る、という決意表明かな?
皆変わっていくなかで、唯一変わらないことで変わってしまったサヤやリクが心穏やかになる場所を作ろうとしてるんじゃないかなぁ、なんて思います。

カイにーちゃんに大いに心配されているリク。
ハジとおそろいのようなお洋服をもらって、ご機嫌です。
無邪気だな~
カワイイ

さて、次回はいよいよイレーヌの件に決着がつきます。
予告を見ると、サヤが赤い石を握って泣いているような。
あれはイレーヌ?
やはり、ディーバの血でシフとなったのだから、サヤの血は毒にしかならないのでは?

次回が楽しみ。
がんばれ、カイ。

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Episode-27 パリ・ジュテーム

ネタバレありです。

シフの正体が、ディーバ側の創った生物兵器の一種だということが明らかになりました。
おそらく、例の葡萄酒の中身と同じくディーバ側の生物兵器戦略の一貫(というか出発点)という形で物語の大きな流れに係ってくると予想しています。
異形の翼手が人へ投薬することで造られるように、シフも元は人なのでしょうか?
シフが意思を持つがゆえに脱走したことを反省材料に、理性も感情もない異形の者を兵器として造りだそうとしたのだと思うのですが……
翼手であるシュバリエが、使い捨ての駒のような翼手を造り出す、その意図はどこにあるのか。
単純にディーバ側の組織拡大のための資金作りというだけではない意図がそこにはありそうで、今後の展開の楽しみなところです。
とはいえ、使い捨ての駒とされた人のことを思うと、その無常さがやりきれません。

カイは、「リク(やサヤ)の帰る場所を作って待つ」、という役割を思い出し、それをイレーヌに肯定してもらうことで、心の平安を取り戻したようです。
よかった。
「帰る場所になる」って同じことをサヤに対しても思ったはずなのに、リクがシュバリエとなったことで動揺して、そして結局また同じ結論にたどりつく。
これはサヤが、翼手と戦う自分を受け入れては否定し、また受け入れては否定しを繰り返しながらディーバと会い、戦うことの自覚をもったのと同じ構造で、一見、同じことの繰り返し。見ていると「悩んでばかりではっきりしないヤツ。うざったいなぁ」との感想をもっちゃうんですが。
サヤは何度も心を揺らして戦うこと・翼手であることを受け入れてきたからこそ、ソロモンの「肉親と共に」という誘いに簡単に頷かずにいられたのだと思います。
そんなふうにカイも同じように心揺らしながら、異形のリクとサヤと家族の絆を深めていくのではないでしょうか。
頑張れ、カイ。

次回は、サヤがイレーヌを助けることができるかどうかが気になるところです。

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BLOOD+と腐女子

BLOOD+

かなり気に入っています。
どの位気に入っているかというと、見れそうにない日は録画予約するし、録画滑っちゃったらAIIでネット放送見るし。
やっぱり続きが気になるのですよ。謎が沢山あって、なかなか先が読めなくてね。
ベールが一枚ずつ剥がされるように、謎が解き明かされていくのがとても気に入っています。

BLOOD+。見始めたのは、ガンダムの後番組というのがきっかけです。番組宣伝を見て面白そうだなと。映画版の存在は後から知り未だに見ておりません。
私、家族にはナイショの隠れオタなので、アニメを率先しては見ないようにしています。
ところがありがたいことにツレはガンオタなので、種は取りあえず見とけっていう感じだったので、ありがたく一緒に見てました。ハガレンの番組宣伝を見た時も、これは絶対好みだと思ったのですが、ツレは興味なさそうなので見るのをあきらめました。
その後の友人や世間の盛り上がりを見て、最初から見れば良かったと随分後悔しました。
だから、ハガレンの二の足を踏まないように、ここはきっちり「見るよ」と自己主張し、現在に至っております。

土曜の夕方6時。この時間枠、種やハガレンなど、腐女子の一大ジャンルを築いたアニメが続きましたので、次はっていう期待もありました。
第一印象派は、
背景はえっらいキレイなのに、キャラクターデザインが冴えないなぁ。
らないのですが)精巧で空気感のある背景なのに、人物は平凡。
(これはあとでProduction I.G制作で、押井さんが制作協力ということで納得)
しかも、主人公が制服の女子高生で、刀を振り回して、って。
これはもしや、腐女子向けではなく、男性のオタク向けじゃないかとも思いました。

あるとき、ProductionI.Gの公式HPを見たところ、「同じ時間枠の種やハガレンを受容する腐女子を意識している、サヤの周囲に現れるいい男たちにご注目を」みたいなことが書いてありました。確か。
それを読んだ一腐女子としては、
「デビット×カイ? ハジ×カイ? カイ×リク? 」
まぁ、とりあえずそんな妄想に励もうとしたのですが。
萌えません。
やっぱり、主人公が絡まないと、盛り上がりませんよ?
だめじゃん、I.G

とはいえ、映像綺麗だし、物語の骨子は「サヤの自分探しの旅」っていうことではっきりしてるし、しかも私好みだから、まぁ見るか、っていう感じで見つづけることに、決定。

おっ! と思ったのは、ベトナム編の半ばでした。
全寮制の女学校っていう設定が好みなのと(クララ白書とか、全寮制じゃないけどまりみてとか)、ベトナム戦争っていうアニメではあまり耳にしない設定が出てきたからで、しかも
意地悪な縦ロールに紫のバラの人ならぬ青いバラの人。庭師のハジ。
別の意味で萌え(お笑い?)要素てんこもりで、いつの間にか引き込まれていました。さらに舞踏会に招かれた訳ありな金髪の王子さまが縦ロールじゃなくてサヤを選ぶくだりなんかは、もう何をかいわんや。お約束を外さない、こてこてな展開がいっそ見事。
狙ってるよ、当たってるよ、I.G

なんてほくほくしつつふと我にかえりました。

狙ってるって何? 当たってるって何? 
ん?

そこはかとなく少女漫画や少女小説ちっくな(敢えてこの表現をつかうよ!)展開は、確かに男オタク向きじゃあない、ような気がします。
それで思い出したのが、月刊LALAに連載されていた「遥かなる時空の中で」。
あれは女子高生が平安時代に飛ばされて、八葉だかなんだかの守り手の男性(タイプの違ういい男たち)と主人公が大活躍、な話だったような。
(調べてみたら、元は人気の女性向け恋愛シミュレーションゲームだとか。
ゲーム全然知らない私ですが、アンジェリークとかネオロマンスシリーズとか、乙女ゲーとか、耳にしたことはある単語だわ)

あれと構造が似ている気がします。特別な課題を与えられて、守り手のいい男に囲まれて、半死半生の目にあいながらも頑張って課題を達成していく、キャラクターや舞台設定の枝葉を取り払うと、そんなふうに両者はまとめることができると思うのです。
それって、乙女の夢の一パターンで、「はるか……」とか、おそらくそれに類する女性向けゲームの市場がある以上(そしてそのゲームの二次創作ジャンルが存在するんですよね?)、そういうジャンルの腐女子というのもいるわけです。

ただ、これは推測なのですが、おそらく同じ腐女子でも種やハガレンに萌える腐女子とは異なるグループではないでしょうか?

この二つの腐女子の集団、物語と自己との距離が大きく違うように私には思えるのです。
片や同性の主人公に自己を投影して直接的に物語と接し、片や好きなキャラクターを通じて物語に接する(これがキャラ萌えってヤツ?)。
ジャンプ系の二次創作でも、機械的に作中のヒロインを自分の名前に変換する「ドリーム」小説を好む人は、作中に直接自己を投入するという意味で前者のグループに属しているように思えてなりません。この「ドリ者」とキャラ萌えのホモスキーは、同じジャンルの二次創作でも決して交わりません。「ドリームキモ」って一刀両断だし、オリキャラ(大抵は作者の代理人)だって、いい顔しないからね。(ドリの人がホモスキーの人をどう思っているのか、目にしたことはありません。基本的に友人知人はホモスキーだから)

長々と書きましたが、要するにI.Gが、種やハガレンではない腐女子層を開拓し、取り込むことを意図して展開してるなら、種やハガレンと腐女子を意識しているっていうI.Gの発言は納得だし、また面白いなって思ったわけです。

どれだけ腐女子を取り込むことが出来るかなぁ。
作品そのものを純粋に楽しむだけじゃなくて、そんな斜に構えた楽しみ方をしています。

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Episode-26 サヤに従うもの

「リクがいなくなったら、オレは一人になっちまう」 ディーバに血を吸われ命が失われようとしたリクが、サヤの血によりシュバリエとして生き続けることになるのは、このカイの悲鳴にサヤが動かされたからです。 その瞬間、カイとサヤとリクの兄弟の絆が断ち切られたように見えました。 しかし、血の絆によりサヤとリクは血縁以上に結びつくとは、皮肉なものです。 カイが兄貴ぶって弟離れできずにいるのは、薄れゆく血縁の絆にすがっているいるように見えて、心が痛くなります。

「サヤはサヤのままに」 ハジはひざまづいてそういいましたが。 あれ、狙ってますか? 腐女子に黄色い悲鳴を挙げさせようとしています?

ヲトメの永遠の夢という気もしますが、好みのカップリング(私の場合はアキヒカ)に置き換えると、かなり萌えるような気がしませんか? 私は萌えましたよ。

シフとは何者か、次回の予告をみて、ようやく判ったような……。 次回も楽しみです。

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夢花李『同細胞生物』(太陽図書KRAFTコミックス)

本日、突発的に午後時間が空いちゃって(その分明日働くんですけど)、これ幸いと本屋へ。
月初めだから、コバルトやビーンズといった、ヤングアダルト系の新刊が山積みのはず。
ということで、いそいそと。

一回りして、惹きの強いものがなかったのですが、未読の篠原美季『英国妖異譚』シリーズ(講談社ホワイトハート文庫)の未読のものを発見したので、購入することに。時間があるので本屋から立ち去りがたく、コミックコーナーに移動。『最遊記』を読もうとかと思ったのですが、大型コミックで冊数もかなりあり、収納場所の問題を考えて断念。
で、こちらも目新しいものはないな~、などと思いながらBLコーナーへ。
で、平台にある1冊が目に飛び込みましてね。
輪郭線が細かく、淡い色遣い、面長で切れ長な目元の男の子二人が並んで、通り過ぎる人を真っ正面から睨んでいるんです。あれ~目合っちゃったよ~っていうカンジです。
で、クレヨン? パステルで殴り書き

『同細胞生物』

本のタイトルのようです。
イラストの雰囲気と言い、タイトルといい、絶対これ私は好き! 間違いなく好き!!
ということで、購入しました。
こういう直感って、ほぼ外さないんです。
そして今回も外しませんでした。
大当たりです。
言葉で説明できない(したくない)タイプのお話でした。
本屋行ったら、この方のコミック、探してしまいそうです。

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谷瑞恵『魔女の結婚』(集英社コバルト文庫)

読んでみて、人気がある理由が解りました。面白い!
ケルトの巫女姫は、運命の男性と出会い、結婚するために、1,500年の時を眠り続けていた。目覚めた彼女は、果たして運命の人に出会い、無事結婚願望を成就させることが出来るか?! という、物語り。
主人公エレインの探す、運命の人が、所謂ケルトの運命の輪の「運命」である、という途中でわかる裏の設定が、見かけの軽さを払拭します。運命の人に、いつ気が付くのか、続きが非常に気になります。

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『女神の花嫁』後編(集英社コバルト文庫)

いやー。たまげました。ここまで作品の手の内を曝してしまうと、これからどのように先が展開していくか・・・と。

この流血女神伝。架空の大陸上の各国の攻防を背景に、神に魅入られたカリエという少女の流転の人生を描く、大河ドラマです。山奥の猟師の娘が病弱な王子とうり二つだったことから、身代わりに王位継承の陰謀渦巻く宮廷に乗り込んで、一騒動。結局宮廷から脱出したところで、奴隷商人に捕まり、砂漠の新興国の第2王子の后になったり。そこでも王位継承紛争に巻き込まれて、海賊船に身を隠したり。

と、書くとなんとも陳腐な物語に見えるかもしれません。が、シリアスです。
文章も心理描写も世界設定も、非常に綿密で、読みでがあります。
今、続きが気になるラノベのNo.1といっても良いです。

奥行きのある物語なので、この良さをちょっと日記で書くのは無理。
うん。本当に読み応えがありました!

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喜多みどり『天空の剣』(角川ビーンズ文庫)

第一回角川ビーンズ小説賞の奨励賞を受賞した作者による、デビュー第一作、書き下ろし。
通常、入選作が第一作になるのに、あまりに暗い(救いがない?)ので、新たに書き下ろしたとか。
世界を侵す酸の源を立つため、旅に出る女剣闘士と傭兵と魔法使いの話。
小説賞の受賞作を読めば、文庫の方向性が見えてくる、との書評サイトの発言を見てなるほどと思い、購入してみました。
ああ、ビーンズってこういう方向を目指しているのねって、よく解る一作。
前田珠子とかデビューしたあのころ流行ったファンタジー小説の雰囲気そのままという印象を受けました。
こういう路線で頑張るなら、しばらくビーンズ読んでみます。
高殿円氏の新作も来月は出版されるし。
私には懐かしく感じましたが、面白いと思うには、今一つ。
非凡な過去を持つ非凡なキャラクターという設定にもかかわらず、どんな風に非凡であるかストーリーで説得されないので、キャラクターが薄い印象を受けました。作品世界は、ローマを模して、かなり作り込んであるのに、肝心の主人公が舞台設定を生かした活躍をしていないのが残念なところ。
この作者の作品を、また購入して読むか?
微妙。古本屋で見かけたら速攻で買うけど、新刊はなぁ。
むしろ受賞作『呪われた七つの町のある祝福された一つの国の物語』が読みたいです。
これ、タイトルの勝利だと思います。非常に魅力的。

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紫堂恭子『王国の鍵』3(角川書店ASUKACOMICSDX)

国王と皇太子を一度に亡くした次男の王子が、王位継承資格を確保するために、秘宝「王国の鍵」を探して、他の王位継承候補者達と競いながら、旅をする話。
主人公が世界の秘密(失われた歴史)を求めて旅をし、魔法使いに助けられ、龍に襲われたり、ライバルの従姉妹姫に恋心を抱いたり。
数々の困難を乗り越えて、成長していきます。
こうして粗筋をまとめると、典型的なファンタジーですが、本当に王道を行くようなファンタジーです。
こんな風に、ファンタジーというジャンルに真正面から挑んで、面白く物語れるのは、さすが紫堂氏と脱帽です。
ちなみに紫堂氏は、『辺境警備』と『グラン・ローヴァ物語』は別格にして、『エンジェリック・ゲーム』が好きです。巨大兵器商の一人娘が、戦争の是非に疑問を持つ話。珍しく現代モノですが、兵器をなくせないこの現実世界を思うと、「現代のおとぎ話」と思えてなりません。進行する現実社会を思うと、未完で終わるのもやむを得ない気がしますが、紫堂氏の理想の社会というのが、見たい気もします。

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谷瑞恵『魔女の結婚-終わらない恋の輪舞-』(集英社コバルト文庫)

雑誌『Cobalt』に掲載された短編2本と、書き下ろし1本の、短編集。
主人公エレインとマティウスの旅の始めの頃と、旅が長くなった頃の話と、列べて読むと2人の関係が微妙に変化していくのがわかって、面白いです。エレインが、マティウスを運命の人であると認める日が楽しみですが、多分無意識下では気が付いているのだけど、見ない振りをして、結局は気が付いていないエレインのミーハーぶりが、とても可愛く感じます。機会があったらまた読みたいです。

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佐々木倫子『Heaven?』6(最終巻 小学館)

ツレが今月の新刊だという情報を何処かから仕入れてきて、購入したもの。
最終巻です。というか、連載終わっていたのですね。
最近、書評サイトを巡回しないので、情報を見落としがちです。
なんというか、「ふーん」という以上の感想はないのですが、ツレは「佐々木倫子も、最終回らしい話を書けるようになったね」と感心していました。確かに、最終回らしいといえば最終回らしいのですが、こういう日常の積み重ねのような話は、日常のままに終わるくらいが余韻があっていいかな、と思いました。その点『おたんこナース』の終わり方の、ちょっと唐突なカンジが、かえって好きかも。
43話の「距離」は、伊賀君のことがよく解る、そして、オーナーのいい加減だけ観察眼だけはスルドイということが解る、素敵な一話でした。ラスト、オーナーの顔が帽子で隠れていたのが印象的で、こういうのは好きだなぁ。

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エマ

森薫『エマ』(エンターブレイン刊 / ビームコミックス 既刊4巻 1巻ISBN: 4757709722 2巻 ISBN: 4757713126  3巻ISBN: 4757716427 4巻ISBN: 475771887X )

表紙のメガネで清楚なメイド嬢が目を惹く、メイドコミック。
メイド萌と思いきや、手堅い歴史ロマン。厳然とした階級社会であるヴィクトリア朝イギリスが舞台、ジェントリー階級の跡取り息子と、彼の家庭教師だった老婦人のメイドの恋物語。

身分違いの恋と諦めの中にいつの間にか育っていった恋の激しさが、噴出したような新刊4巻の末が出色。

恋愛物語の醍醐味が、数多の障害を乗り越えて愛を成就させるということならば、物語世界においては同性であることすらタブーにならない昨今、一見古くさいような若様とメイドの「身分違いの恋」が感動を誘うのは、主人公二人の誠実なキャラクターの魅力もさることながら、「ヴィクトリア朝の階級社会」が物語の背景として自然にとけ込んでいるから。

何気なく読み進めていくうちに、自然と物語に引き込まれて、4巻ラストのエマの感情の噴出に、がつんと一撃。

お勧め。

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SFのこと(その7)

SF漫画といえば忘れてはいけない、「萩尾望都」。
あ、竹宮恵子もそうですね。何作か読んだのですが、萩尾望都ほどは惹かれませんでした。
SFというには微妙なジャンルだけど、『天馬の血族』(全24巻 角川書店)は面白かったな。

『百億の昼千億の夜』(秋田書店)とか『ウは宇宙船のウ』(小学館)とか。
前に書いたとおり、最初の出会いは原作付きのもので、これもとても好きなのですが、これはそれ以前に読んだ原作の印象がとても強くて。ブラッドベリは短編なのでまだ漫画にしやすいと思うのですが、原作『百億の昼……』は、早川文庫で1.5㎝超の厚みがある本で、しかも多神教と一神教という大きなテーマを持つ作品です。これを漫画として面白く読ませる力量に、ただ感じ入るばかりです。
小説を漫画という手法で再構築することにみごと成功したのは、あの重厚で長大な物語を深く読み込んで自分のものにしたからこそなのでしょう。
すばらしい漫画家という以前に、萩尾望都はすばらしい読み手なのだということに、私は今この文章を書いていて気が付いたのですが、漫画をお読みになった原作者はどのような感想をもったのでしょうか? 何処かで読んだ気がするのですが、どうだったかなぁ?

萩尾望都作で私のお気に入りは
『銀の三角』(白泉社)
『マージナル』(全5巻 小学館)
それぞれ良くて、優劣を付けることはできません。

『銀の三角』は、時間を空間を行きつ戻りつ繰り返しながら、時間の縺れを特定し、それを解くという話し。
明確なモチーフがあるのに、カノンのように定格の演奏というよりは、ミニマムミュージックのような偶然性の繰り返しで奏でられる現代音楽のよう。油断をすると自分が何処にいるか見失ってしまい、その足下の不確かさが何故かとても心地という、なんとも不思議な物語。

『マージナル』は、母と男性のみで構成される社会の話し。
これを読んだのは比較的最近です。
丁度、同じようなテーマでオリジナル小説を書いていた頃で、友人に『マージナル』に似ていると言われて、その時はその感想を流してしまったのですが、後に無自覚に『マージナル』読んでしまったら、自分の書いている話しの不出来さに気が付いて脱力してしまったという思い出があります。
男女差の根本には、女性の「産む性」という肉体の差異の問題があって、この根本がなくなった時に人間の社会は如何に成り立つのだろうか、というしょうもない疑問を今でもたまに考えます。
私がアキラとヒカルが対等であることにこだわることの根底には、実はそんなことがあったりします。が、これを説明するのは、もう数段階説明をしなければならないので、それはまた気が向いたらということで。
そして『大小アキヒカ』がああいう話し(ヒカルの性別不明というあたり)なのは、元はリクエストなんですけど、それを楽しんで書いているのは昔の名残だったりします。

次点のお気に入り。
佐藤史生『ワン・ゼロ』(全4巻 小学館)とか、川原泉『ブレーメン2』(既刊4巻 白泉社)とか。
(川原泉はデビューの頃~別冊花とゆめに掲載された第1作も読んでいたりして~から大好きで、『甲子園の空に笑え』とか『空の食欲魔神』(共に白泉社)とか初期の頃の方が寄り好きかな。「かっこでくくれば同類項」とか「あのの位地がが違う」とか、名言が沢山!)

今一番の注目は、菅原雅雪『暁星記』(既刊4巻まで 講談社)
日本の縄文時代のような狩猟社会で、古い慣習を捨てて周辺の村の統合を目指す「英雄」の物語。
一見異世界ファンタジーの構成を取ってはいますが、私はSFだと思っておりました。途中で出てきたSF的仕掛けに「あっと驚く」(編集部は確かそう煽っていた)よりも、定番なストーリー展開に、ニヤリ。
シャーマンな世界とSF的設定が、これからどうリンクして物語が展開するか、とても楽しみ。

最近読むのは、ヤングアダルトレーベルが多いのだけど、やはり早川文庫のような正統派SFも愉しい!
リアル拙宅の本棚には宝の山が眠っていたから、また書くのに詰まったら本掘りして堪能しよう!

『SF』の項、これにて閉幕。

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SFのこと(その6)

何処までも続く一面の小麦畑。19(ナインティーン)の髪の色。

小麦畑を見るたびに『OZ』のラストを思い出します。モノクロの画面なのに不思議ですが、私はこの先ずっとあの黄金色を思い出すのだと思います。

樹なつみ『OZ』(全4巻、白泉社)
『イティハーサ』と並んで、とても大切な漫画です。
誤爆によって始まった核の応酬とその後にやってきた核の冬を乗り越えて、小国家が台頭し始めた北米大陸が舞台。
タイトルの『OZ』は、核戦争前の科学技術を保つという伝説の科学の都。
主人公3人は、この『OZ』を探しに旅にでます。。
特A級の傭兵ムトウは終わらない戦争の閉塞の中、『OZ』に平和の夢を託します。
フェリシアは、純粋培養された天才科学者。行方不明の兄が『OZ』にいるとの噂を耳にして、『OZ』を探しに旅にでます。
19(ナインティーン)は、フェリシアを迎える使者として『OZ』から遣ってきたアンドロイド。狂ったプログラムが修正され、人間になることを夢見て、『OZ』に向かいます。
三人は反発しあいながら共に旅をし、『OZ』に辿り着きます。
しかし、『OZ』は夢の都ではありませんでした。
それでも彼らは『OZ』で夢を叶えるのです。「突出した科学は人の心を狂わせる」ことに気が付いた彼らは、『OZ』を破壊することを決意します。
その長い旅の中で、フェリシアは兄と再会し、家族に対するコンプレックスを乗り越え、自分を見つけます。
19はプログラムの呪縛から逃れ、人としての意志を持ち、『OZ』と『OZ』の所産である自己を葬り去ります。19は望み通り、人になったのです。
ムトウは小麦を手に入れます。おそらくそれは平和で安定した社会の礎となる農業の再生を意味しているのでしょう。

夢は『OZ』によってただもたらされ、叶えられるのではなく、自分の手で掴み取って、ようやく実現するのです。
多くの命の上に成り立った辛い彼らの旅の終わりが、痛みとともに明日への希望に繋がっていること。それが最後の小麦畑に表現されています。

だからこそ最後のあのシーンが、色鮮やかに目に焼き付いて忘れることができないのだと思います。

『イティハーサ』『OZ』いずれの漫画も、読み応えのある、面白い漫画です。
さーっと読んでも、キャラクターは立っているし、作品世界は綿密に構築されているし、ファンタジーとしての仕掛けやSFとしての仕掛けも、充分に生かされた物語です。
しかしそれだけではなく、「人間とは何ぞや」という哲学的命題と正面から取り組み、作者なりのメッセージが物語として自然に読者に届けられます。
ふと、自分はどうだろうか? と振り返るし、こう在りたい、またはこうは在りたくないという、ある種の志が生まれるのです。
多分、親や先生が言葉で言っても伝わらない何かを、この作品を読むことで擬似的に体感することができるのだと思います。

その漫画という手法を用いた物語の力に、私はただただ感じ入るばかりなのです。

そして余談ではあるのですが、この作品を好きとおっしゃる方に、私は無条件で親近感を感じるのです。ああ、仲間だなぁと。
ヒカ碁好きで、『OZ』が好き、という方を何名が存じ上げているのですが(私がヒカ碁二次創作に嵌って、書き手の方に最初にメールを差し上げるきっかけも、『OZ』でした)、他にもいらっしゃるでしょうか?
きっと一杯いらっしゃるのでしょうね。

相変わらず、長い。
そして、あと一回。
次ぎはもうこんなに力はいってません。好きな漫画ではあるのですが。

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SFのこと(その5)

で、好きなSF漫画。
水樹和佳子『イティハーサ』(集英社ぶーけ豪華本全15巻、早川JA文庫全7巻)
樹なつみ『OZ』全4巻(白泉社)

もうこう記しただけで胸が一杯になってしまいます。
別格。
あ、緊張していたのは、これを小説の部と同じように感想を書こうとしたからか。
今題名を入力して突然悟りました。

『イティハーサ』は超古代の日本が舞台。
主人公鷹野と透(示+古)の暮らす邑は「目に見えない神」の宝物を奪いにきた大陸渡来の目に見える神とその信徒に襲われる。「目に見えない神」は村人を救わず、主人公達は「目に見えない神」とその信徒に救われる。「目に見える神」には、殺害や略奪を善とする神(威神)と、平和と安定を尊ぶ神(亜神)があり、主人公達はこの亜神の一行と共に、神宝と「目に見えない神」の謎を解く旅に出かける。
そんな物語の前半部分は、むしろ超古代ファンタジーという様相を呈しているのですが、最後に主人公が見つける「目に見えない神」の謎と、鷹野ととうこの役割がSF的(作者はずっとこれはSFだと主張されていました)。
最後に種明かしされた作者水樹和佳子がこの作品に託した時間と空間の長さ・広さに、ただただ圧倒されるばかりでした。
物語は目に見える神々が善神・悪神と分けられたことに象徴されるような善悪の単純な二項対比の中で、人間の本質は何なのかを問い続けます。
誰かを守る為の殺害は善なのか悪なのか? 自分を守るために殺害は善なのか悪なのか? 自己を捨てることで守られる平和が果たして善なのか悪なのか?
善であり悪である。善でなく悪でもない。その狭間にあり、どちらにも惹かれるからこそ人間なのだと、そこに何らかの救いがあるのだ、と物語は閉じるのです。

掲載誌『ぶーけ』は、事実上廃刊されてしまいました。
少女漫画雑誌でありながら、『イティハーサ』のような漫画を連載する少々毛色の変わった雑誌であったのですが、あるとき一般的な少女漫画雑誌へ編集方針が転換し、水樹和佳子を始め、水星茗とか夢路行とか私の好きだった方は軒並み切られてしまいました。『イティハーサ』の最後は書き下ろしで出版されたといういわくつきです。
『ぶーけ』自体はこの編集方針転換にも売り上げを伸ばすことが出来なかったのか、結局廃刊に至りました。(あの時は本当にびっくりしました。こんなメジャー雑誌でも廃刊しちゃうんだって)

その後、水樹和佳子は早川書房に拾われて、『イティハーサ』ほか『月虹』等SF系の著作を中心に早川JA文庫から復刊したわけですが、途端SF畑での『イティハーサ』の評価が高くなって、ジャンルの壁の高さを実感した次第です。
『イティハーサ』は10年間、『イティハーサ』としてそこに在り続けていたのに。

またなが~い。とほほ。
『OZ』はまた次ぎに譲ります。

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SFのこと(その4)

ディックを探して本掘りをしました。
狭いリアル我が家の4畳半のリビングの、3畳ぐらいのスペースをスチール本棚で区切って、「私の部屋」を作ってます。
スチール本棚の奥行きは25センチ程度。A5版のハードカバーを奥には奥行きがあるので、余ったスペースにコミックや文庫を置いています。
つまり本棚の前面にはハードカバーが。その奥にはあたかも隠すように文庫・コミックが。
なので、どんな本を仕込んでいるか、憶えていません。なので、前面のハードカバーをどかさないと確認できないし、そもそも様々な種類の紙類が散乱しているので、本棚に辿り着くのに一苦労。3畳なのにですよ?
「本掘り」という言葉は、そんな私のスペースの惨状にぴったり。

電車の中、読書に夢中で下車しそびるということは、流石にそうはありません。
初めての経験は、
大原まりこ『未来視たち』(早川JA文庫)
本掘りをしていたら、大原まりこの山を発見して、思い出しました。

今をときめく小野不由美の『魔性の子』(新潮文庫)を初版で持っているのが、ちょっと自慢だったりします。
あのころはまだ小野さんも新人さんでね~。
これは面白そうだと、ちょっとした先物買いの気分でした。あっという間に大ブレイクして、賭に勝ちましたよ、ほほほとゴキゲンだったのですが、その時私が一番買っていたのは別の方でした。

菅浩江『メルサスの少年』(徳間デュアル文庫)
一言でいうなら、「透明でセンシティブな世界」
紋切り型の表現ですが、結局10年たってもこういう世界が私は好きなのです。
確かに小野さんは、良く調べものをして、それを生かした物語をスキなく構築して、それを読者に伝える筆力をお持ちです。
が、私は、ストーリーに粗があっても、ごく普通の文章であっても、作品世界に漂う透明感がとても好きで、とにかく夢中でした。
一時期新作が見られなくて淋しかったのですが(後で知りましたが子育てでご苦労されていたようです)、現在はSFとミステリーの領域を股にかけて活躍中。ジュブナイル(ヤングアダルト)でしか出せないような少年少女を主人公とした透明感のある作品ではなくなりましたが、心理描写の巧みな、言葉を発することなく空気を味わいたい作風は相変わらずで、文庫になるまで待てないお方です。

次は漫画の部

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SFのこと(その3)

ひさしぶりにやっちゃいました。
気が付いたら最寄りの駅の三つ先でした。しかも急行の駅で三つです。
えっと、昨日の帰りの通勤電車でのことです。読書に夢中で降りるべき駅に気が付きませんでした。それで帰宅時間が30分も遅くなってしまいました。

さて、SFの長いもの。
カード・マキャフリーに続くお気に入りは、ディックです。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が有名です。早川SF文庫フェアーなんかがあると必ずラインナップされているので、特徴的なタイトルと相まって目にしたことのある方も多いのでは?
映画『ブレードランナー』の原作としても有名ですね(そういえば、あの映画の音楽はヴァンゲリスなんですよ)。

で、どうゆう話しかというと……
思い出せません。
それどころか、購入したかどうかも憶えていません。
私の記憶に残っているのは、ディックは面白い、好き、ということのみ。

ということで、ディックの本は何を読んだかを確かめるために、本掘り(私の造語。本棚から本を発掘すること)をしてみました。
確かに何冊が出てきました。上記の『アンドロイド……』も持っていました。中を捲ってみましたが、やはり読んだ記憶がありません。ツンドクするほどゆとりのある生活ではないので購入した本は余さず読んで、持っている本=読んでいる本なのですが、どれも記憶にありません。
そこで昨日は『アンドロイド……』を持って出勤。電車の行き帰りに読みました。

それで、今日の日記の冒頭に繋がるわけです。
とにかく面白くて夢中になっていたら、家の前を通り過ぎて時間にして15分先まで行ってしまったわけです。

主人公はアンドロイドを狩る賞金稼ぎの男で、火星から逃亡してきたアンドロイド8人を殺していくという話しです。
舞台は核戦争の後の地球。死の灰により遺伝子を傷つけられた人々は「不適格者」の烙印を押されて落伍者になるのですが、この恐怖から目を反らすためのものは、機械から齎される強い感情と、24時間テレビやラジオから垂れ流される娯楽のみ。人々はいつか本物の動物を飼うことを夢見ている。画一的で、絶望的な社会です。
人に限りなく近いアンドロイド。彼らを庇う心優しい不適格者。アンドロイドのように心動かすことなく職務を真っ当する主人公の同僚。
本物の動物を買うという夢しか持たない主人公は、彼らと対峙することで、本物の生き物とは何かということを自分の存在を含めて問い直さなければならなくなります。
社会に抑圧される「個人」が如何に生きるか、というテーマを持っているようです。
主人公には、めまぐるしく希望と絶望が訪れるのですが、結局最後に彼の至った境地は何だったのか、読みとれずにいます。
それをハッピーエンドととるか、バットエンドととるかは読者次第。
あなたはどう? とディックに問いかけられているようです。

難しいです。
所謂近代文学の「名作」というのには心惹かれず読み終えたことはまずないのですが(夏目の『ぼっちゃん』や『猫』ですら挫折しました!)、SFの名作だと読めてしまうのは何故でしょうか?
早川SF文庫というレーベルが、とにかく好き、ということもあるかもしれません。

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SFのこと(その2)

長いのといえば、絶対忘れちゃいけないのは、いえ、忘れることができないのが、マキャフリー小母様の
「パーンの竜騎士」
竜の背中に乗って飛んでみたい! しかも竜、火なんか噴いたら最高! と思ったことはありませんか?
このお話は、そんな夢のような星「パーン」に暮らす人々のお話です。
緑豊かな惑星パーンは、周期的に有機物を食い尽くす「糸」が宇宙から降ってくるのですが、それを地上におちる前に焼き尽くすのが「パーンの竜騎士」の仕事。ところが「糸」の来襲が一周期抜けた事から、竜と竜騎士はパーン社会の厄介者に成り下がってしまいます。もう糸降りはないとパーンの人々が安心した矢先、糸降りが始まります。極限まで減少した竜騎士達で如何にパーンを守るか?
このシリーズの第一話は、そんな話しです。
糸降りに規制された惑星パーンの暮らし、竜騎士と太守の税を巡る攻防とか、古い慣習を守る頑迷な人々の目を新しいことに向けさせる苦労とか、話しの面白さはどちらかといえば、異世界ファンタジーの領域なのですが、パーンの歴史を紐解くと、星間移民が科学の粋を極めて惑星パーンに定住し、その知識が忘れ去られた頃、パーンの地下に残された古い技術を発掘し復元して、糸降りそのものを排除しようと竜騎士達が格闘するのです。
その辺の仕掛けが例えナルくとも、SF的なのです。竜に乗るという設定の妙と、作り込まれたパーン社会、そこを舞台に活躍する魅力的な登場人物達。本を読んでいるのに、パーンの住民になったよう気になってしまうほどです。
難しい事を考えずに物語世界に遊び楽しむことができます。その時間は私にとっては何物にも代え難いものがあります。

カードの世界に触れる時、常に自分が問われる厳しさも内包しているのですが、マキャフリーの世界はこれとは正反対。気楽な読書を楽しむことができます。

ああ、長い。
でも、まだ続きます。

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SFのこと(その1)

私の読書ジャンルは大きく分けて、3つ。
少女小説系ヤングアダルト(BL含む)・SF・ファンタジー。
って思っていたけど、これ、一見異なったジャンルに見えるけど、すごく接近していて同じジャンルといってもいいかも。
っていうか、結局文庫レーベルの違い?
そう考えると、なんだかかんだで踊らされているのですね~。

SFの原点は松本零二です。
ヤマトとか999とかをアニメで見て、SFの活字を読むようになりました。そんな私のSF(はっきり書くと早川SF文庫)の原点は、エドモンド・ハミルトンの『キャプテン・フューチャー』シリーズ。これも結局はアニメがきっかけなのですが、主人公達の旅する太陽系の、ギリシャ神話的イメージを下敷きにした風俗が面白くて好きでした。今読むと、赤面してしまうような他愛ない話しなのですが、やはり原点はこれ。だからSF好きとっていも、結局のところ私の好きなSFはスペースオペラかな?
それで思い出しました。
わすれちゃいけない『スタートレック』
『スターウォーズ』よりだんぜんこちらが好きでした。
最近のは見ていないし読んでいないけど、スタートレックの二次創作をしていた人たちが、新しい『スタートレック』の書き手というのは、とても面白い世界だと思います。

光瀬龍も好きです。
『百億の昼 千億の夜』は、萩尾望都の漫画よりも先でした。(ちなみに萩尾望都はSFを漫画化する人というイメージがありました。なんて失礼な! 知らないって恐ろしい!)
短編連作の宇宙開発の年代記があります。礎になって消えていく名もない人の話です。それでも人は進化し続けていくのか、と胸があつくなります。
古本屋で見かけるたびにかって揃えているのですが、なかなか揃いません。
同じ雰囲気の短編連作が谷甲州にもあって、こちらも好き。
ブラッドベリ。これも萩尾望都がうまく漫画にしていますが、活字の持つ限定されないイメージの世界も魅力的です。これも、良さを言葉にしづらいタイプの話し。

長いものを1作上げるとしたら、カードの『エンダーのゲーム』とその続編『死者の代弁者』等。
軍人養成学校へ入学したエンダー少年は、課程で人類社会を侵略する異星人撃退を命じられる。エンダーは天才で、教授陣の持ち込む難題を負け知らずでこなしていくが、それはシュミレーションではなく実際の戦闘で、異星人を虐殺してしまう。そして、エンダーは贖罪の旅に出る。という話しです。
随分前に読んだものでうまく紹介できないのです。
私は本を読んで良く泣くのですが、あれほど涙の止まらなかった本はそうはないです。
設定はSFですが、根底には主人公が艱難辛苦を乗り越え成長していくという、『ヒカルの碁』と同じ構成を持つ物語。私は昔からこの手の物語にすこぶる弱いようです。

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