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雪乃紗衣『彩雲国物語』(角川ビーンズ文庫)

面白い!

夢中になって、既刊(番外編を除く)全てを読みました。

もっと早く読んでおけばよかった!

と後悔しながらも、

一気読みできる幸せ!

大人っていいなぁ。シリーズものの大人買い一気読み。大人の特権ですね。
サラリーマンやっててよかったと思う、この瞬間。

さて。そもそものきっかけ、とある土曜の朝。
週末につき、普段あまりじっくり見ることのない新聞のBSの番組表に「機動警察」の4文字を発見!
確か、NHKBSのこの時間帯はアニメなはずで、そして「機動警察」と言えば、やはり

パトレイバー

でしょう。と、わくわくしながらBSを見ようとしたのですが、わが家のBS、今時専用チューナーで受信して、テレビに出力しているという、一体いつの時代の家電なのさ! というありさまで。しかも、チューナーとテレビの間には、ステレオやビデオやHDレコーダーが噛んでいて、もうどれのスイッチを入れたらBSが見られるか、セッティングした人じゃないとわからない状況で、配線を追いかけていろいろ試したけど、結局は見られず(くー)。
最終的な敗因は、アンテナの向きがちょっとずれていたから、というギャグのような落ちで、BSの視聴方法を学習した私は、翌週、意気揚揚と「機動警察」を見ることができました。
が。
丁度、2課ご一同様が、ご神木の祟り騒動に巻き込まれる回で、今三つぱっとしなかったんです(同じゆーれーものなら、廃屋で訓練の話の方が面白いのに。あれって、OVA?)。
それで、だらりとテレビをつけていて始まったのが、「彩雲国物語」でした。

世間知らずの王様が、恋しい主人公への贈り物に藁人形を送る、というシーンに心わしづかみで、つい、ふらふら~っと本屋に行って、本をめくったら、あとは一気でした。

とはいえ、「彩雲国物語」との出会いは、アニメが初めてではありません。
「彩雲国物語」が人気シリーズであることは、知っておりました。
本屋に行けば、平台に積んでありますから、目立ちます。
っていうか、一応ビーンズは、高殿円氏のホームグランドなので、一通りチェックしています。しばらくは、雑誌のビーンズも購入していましたし。
ですので、作者雪野紗衣氏の第1回の角川ビーンズ賞の選評とかコメントとかも目にしていてますし、1作目発表後、書評サイトはどこでも軒並み好意的でしたしね。

貧乏暮らしだけど家格だけは高い家のおじょーさまが、やる気ナシの王様のお妃として後宮に上がり、教育係として根性叩き直すアルバイトを引き受ける、というお話。家格は高いけど貧乏という設定そのものに乗れなかったのと(まあ、昔話には没落した貴族の家の娘が……っていう話は沢山ありますが)、主人公の周りにはやたらとイイ男がわらわらしていて、しかも主人公モテモテという設定が胡散くさくて。
どうも、苦手なんです(涙)。総受け系のモテモテ話って。
しかも、中華風ファンタジーといえば、「十二国記」が有名ですが、あれの強烈さかげんは一種のトラウマで、同種の設定のものに伸ばす手を引っ張るって言うか……
あの藁人形(のシーン)には、私の中のもやもやしたものをふっとばす勢いがありました。

そもそもの話は、主人公がアルバイトで後宮に妃として入りなまくらな王様の根性を叩き直すというの話ですが、シリーズ化されると話の方向がちょっと変わりました。
主人公紅秀麗が初の女性官吏として活躍する、女の一代記、といった様相を呈しています。当然、主人公の成長たんでもあるわけです。
そう。私好みの話だったわけです。

中華風ファンタジーしかも主人公の成長*ということで、「十二国記」とダブる側面もあるのですが、読んでいる最中は「彩雲国物語」の世界にどっぷりで、思い出すこともありませんでした。
違う話なので違うのは当たり前なのですが、そういうところを抜きにしてもやはり違うなぁ、と。
主人公陽子にしても高里にしても、基本的に自己否定・他者否定の中から、自分を掴み取っていく話で、主人公たちの逡巡も巻き込まれる出来事も、主人公に容赦がない。極限に追い込まれた辛い環境のなかで、ようやく掴み取ったからこそ陽子は強く優しくなれるわけで、小野不優美氏は自分を掴み取るに至る葛藤こそを主題として描いたわけです(高里はまだその過程。数年前に予告されていた新刊はどうなったのしょう)。
一方「彩雲国物語」の主人公秀麗の寄って立つ精神的な基盤は物語が始まる前に完成されており、その苦しい過程を主題として物語としては描かれていない。あくまでも秀麗の過去の話として語られるに留まり、読み手は物語の手法で作者に説得されていない。結局、ここが物語に乗れるか乗れないかの分かれ目。そのあたりの薄さがちょっと気になったものの、それ以上に初の女性官吏としての誠実に困難を乗り越えていく姿が描かれる物語がとても面白く、引き込まれているのです。まるで、彩雲国の住民になったような気持ちになりながら。

もう一つ。「彩雲国物語」を気に入った理由があります。
文章のリズムがとても良くて、読んでいて楽しいというのがあります。
中華ファンタジーらしく漢文調で語られる部分もあるのですが、ベースとなる今風な口語と上手く混じって独特のリズムになっていて、それが私にはとても心地よく感じます。ギャグも「さぁ、笑え!」というような作りこみじゃなくて、あのキャラクターならそうだよなっていうギャグ。私が心引かれた、王から秀麗へのプレゼント攻勢も、アニメで見てもテンポが良くて面白かったのだけど、文章で読むとなおさらです。好きだなぁ。
さりげなく書かれた一言が、実は伏線だったということもかなりあって、結末を知ってから読み返すと、あぁこんなとこにもあんなとこにもっていう再発見が楽しくて繰り返し読み直しています。

と、いうことで、「彩雲国物語」、今、とっても気に入っているのです。

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