高野真之『BLOOD ALONE』3巻(メディアワークス)

BLOODですが、映画バージョンとも、ましてやアニメのBLOOD+とも関係ありません。
まったく関係ありません。

強いて共通点を上げるなら、主人公が少女で吸血鬼である、ということ。
こちらは、吸血鬼のかーいー少女ミサキちゃんと、血の繋がらない保護者クロエとの、ゲロ甘な関係を描いた漫画です。

エロではありません。
家族愛と異性愛のはざまにある、でも深い結びつきは、甘いとしか言いようがなく、その甘さを楽しむ物語なのですが。

これが物語の縦糸としたら、横糸はミサキちゃんが吸血鬼となった謎。これはクロエの持つ特殊能力と関わりがあり、ゲロ甘な日常に暗い影を投げかけると共に、ミサキちゃんとクロエの関係を強めていくきっかけとなるのです。

きっと最後は、読者に謎が明かされ、クロエが追う誰かを追い詰めるのだと思うのですが、それはまだ先です。

今月発売の3巻。
縦糸と横糸の絡みがわるかったようです。
ゲロ甘話としては面白いのですが、物語中で謎について言及されたのはほんのちょっと。
それも物語の核にはなっていなかったので、ちょっと食い足りなさが残りました。

今回は、幕間とでもいいましょうか。
ネタを仕込んでいた部分も、見受けられた? ので、次回を楽しみに待ちます。

……

1年半後?

くぅーっ

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如月弘鷹『BLOOD+ 夜行城市』(角川書店 コミックスA)

BLOOD+のメディアミックス。
BLOOD+本編も、ロードムービーをイメージして、沖縄からベトナム・ロシア・パリ・ロンドンと旅をして、いわば面の移動をしておりますが、同時にBLOOD+は時間軸に沿って移動を移動することで、物語が展開しております。
そして、時間軸展開の媒体はアニメではなくて、漫画・小説・ゲーム。
メディアミックス戦略に乗せられて、まずは小説を。
すぐに、漫画も入手する予定でしたが、近所の本屋はどこも品切れなのか入手できません。
三省堂で漸く……と思ったら、再販したもののようでした。後日、行きつけの本屋に行ったらありましたよ、再販が(涙)

とりあえず、メディアミックス戦略、成功しているのかしら?

さて。
この『夜行城市』は、テレビシリーズ開始直前の香港が舞台の、ハジの話。
ベトナムで暴走したサヤに恐怖を感じたことを後悔しているのか、それとも無理やり目覚めさせたことに追い目を感じているのか。
サヤに会いたくても会えないと躊躇している後ろ向きなハジを、翼手に弟を殺された警官が立ち直させる話。
サヤは、ハジの回想の中でしか出てきません。
サヤを思って途方に暮れたハジが、なんともかわいらしいです。

が。この話の主人公は、日系香港人刑事の西であり、ハジではありません。
香港がイギリスから中国に返還される直前、魔都九龍城で血を抜かれて殺される事件を追う中で、西はハジと出会うのです。
場末の部屋で空腹のハジを西がかいがいしく世話をし、それを思いがけずに素直に受け入れるハジがなんともかわいらしいです。そういえば、ハジ、サヤのお世話をするばかりでされる側に回ることないから、珍しい姿です。新鮮。

ハジは、香港を暗躍する翼手の黒幕にさらわれ、西とアイザック(西たち地元警察から事件の調査権を移管させた専門調査官、実は赤い盾)でハジを救出に行き、西の血によって空腹が癒されたハジによって翼手の一段はせん滅し、ハジは「サヤは沖縄にいる」というアイザックの言葉と西に後押しされ、沖縄に旅立って、お話はお仕舞。

こうやってまとめると、結構他愛ない話ですね……。ありゃ。

とはいえ。お世話されるハジ、さらわれ助けられるハジ、か弱気なハジ。
本編ではお目にかかることのできない姿を目にすることができますので、ハジ好きさんにはことのほか楽しむことができるでしょう。

要注意なのが、サヤはハジの回想の中でしか出番がありません。その他、一切女性が登場しません。
返還直前の香港、男ばかり、といえば、ハードボイルドなアクションもののイメージが沸きます。
まぁ、そう読めないこともないですがー
実際、漫画本編のオマケに、アニメのプロデューサーの対談があとがき風に載っていて、そういう方向で話を進めているのですがー

なんていうか。

BL?

あの、登場人物をつなぐ過剰とも思える友情と信頼は、腐女子にとってはそーいう風に読み変えるべきものでして……
直接的なシーンはなくとも(あ、一カ所あった。情報屋と黒幕のマフィアの親分。魔都香港ならそんなのもありかなぁ、という程度)、そーいううものです。
西×ハジを本命として、西←アイザック、西←情報屋、西←医者、西兄弟など。

特に、西とアイザックが2人で翼手化したマフィアからハジを救出して絶体絶命に陥った時、ハジに血を与える時間を稼ぐために、「俺はまだ動ける」と一人で戦いに赴いたアイザックがね、カッコイイと思うのと同時に、
「愛だよねー」
なんて。

そうそう、後ろの対談でプロデューサーのお二方が、この後、西は赤い盾に、というようなお話をされていましたが、私もそう思いました。アイザックの事後処理に来た赤い盾の一員に、弟の死亡の話を聞き、同時にアイザックやハジへの深い思いを知って、スカウトされるとか。
でも、赤い盾の一員になると、例のディーバ襲撃で殺されちゃうからなぁ。
「今は香港で仕事があるから」
と言って断り、香港返還後しばらくたって落ち着いてから、赤い盾を尋ねていくと、崩壊した直後で、赤い盾の復興に尽力するとか。

珍しく、何やら話が書けそうな雰囲気に……
いえ、書きませんが。

一応、コミックスAから発売されていますので、腐女子以外の方も手にとるかと思うのですが、そんな腐女子以外の方の目のは、この漫画はどのように映るのでしょうか?

そんなこんなを考えると、なかなか楽しい一冊でした。
苦労して入手したかいがありました。

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夢花李『同細胞生物』(太陽図書KRAFTコミックス)

本日、突発的に午後時間が空いちゃって(その分明日働くんですけど)、これ幸いと本屋へ。
月初めだから、コバルトやビーンズといった、ヤングアダルト系の新刊が山積みのはず。
ということで、いそいそと。

一回りして、惹きの強いものがなかったのですが、未読の篠原美季『英国妖異譚』シリーズ(講談社ホワイトハート文庫)の未読のものを発見したので、購入することに。時間があるので本屋から立ち去りがたく、コミックコーナーに移動。『最遊記』を読もうとかと思ったのですが、大型コミックで冊数もかなりあり、収納場所の問題を考えて断念。
で、こちらも目新しいものはないな~、などと思いながらBLコーナーへ。
で、平台にある1冊が目に飛び込みましてね。
輪郭線が細かく、淡い色遣い、面長で切れ長な目元の男の子二人が並んで、通り過ぎる人を真っ正面から睨んでいるんです。あれ~目合っちゃったよ~っていうカンジです。
で、クレヨン? パステルで殴り書き

『同細胞生物』

本のタイトルのようです。
イラストの雰囲気と言い、タイトルといい、絶対これ私は好き! 間違いなく好き!!
ということで、購入しました。
こういう直感って、ほぼ外さないんです。
そして今回も外しませんでした。
大当たりです。
言葉で説明できない(したくない)タイプのお話でした。
本屋行ったら、この方のコミック、探してしまいそうです。

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紫堂恭子『王国の鍵』3(角川書店ASUKACOMICSDX)

国王と皇太子を一度に亡くした次男の王子が、王位継承資格を確保するために、秘宝「王国の鍵」を探して、他の王位継承候補者達と競いながら、旅をする話。
主人公が世界の秘密(失われた歴史)を求めて旅をし、魔法使いに助けられ、龍に襲われたり、ライバルの従姉妹姫に恋心を抱いたり。
数々の困難を乗り越えて、成長していきます。
こうして粗筋をまとめると、典型的なファンタジーですが、本当に王道を行くようなファンタジーです。
こんな風に、ファンタジーというジャンルに真正面から挑んで、面白く物語れるのは、さすが紫堂氏と脱帽です。
ちなみに紫堂氏は、『辺境警備』と『グラン・ローヴァ物語』は別格にして、『エンジェリック・ゲーム』が好きです。巨大兵器商の一人娘が、戦争の是非に疑問を持つ話。珍しく現代モノですが、兵器をなくせないこの現実世界を思うと、「現代のおとぎ話」と思えてなりません。進行する現実社会を思うと、未完で終わるのもやむを得ない気がしますが、紫堂氏の理想の社会というのが、見たい気もします。

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佐々木倫子『Heaven?』6(最終巻 小学館)

ツレが今月の新刊だという情報を何処かから仕入れてきて、購入したもの。
最終巻です。というか、連載終わっていたのですね。
最近、書評サイトを巡回しないので、情報を見落としがちです。
なんというか、「ふーん」という以上の感想はないのですが、ツレは「佐々木倫子も、最終回らしい話を書けるようになったね」と感心していました。確かに、最終回らしいといえば最終回らしいのですが、こういう日常の積み重ねのような話は、日常のままに終わるくらいが余韻があっていいかな、と思いました。その点『おたんこナース』の終わり方の、ちょっと唐突なカンジが、かえって好きかも。
43話の「距離」は、伊賀君のことがよく解る、そして、オーナーのいい加減だけ観察眼だけはスルドイということが解る、素敵な一話でした。ラスト、オーナーの顔が帽子で隠れていたのが印象的で、こういうのは好きだなぁ。

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エマ

森薫『エマ』(エンターブレイン刊 / ビームコミックス 既刊4巻 1巻ISBN: 4757709722 2巻 ISBN: 4757713126  3巻ISBN: 4757716427 4巻ISBN: 475771887X )

表紙のメガネで清楚なメイド嬢が目を惹く、メイドコミック。
メイド萌と思いきや、手堅い歴史ロマン。厳然とした階級社会であるヴィクトリア朝イギリスが舞台、ジェントリー階級の跡取り息子と、彼の家庭教師だった老婦人のメイドの恋物語。

身分違いの恋と諦めの中にいつの間にか育っていった恋の激しさが、噴出したような新刊4巻の末が出色。

恋愛物語の醍醐味が、数多の障害を乗り越えて愛を成就させるということならば、物語世界においては同性であることすらタブーにならない昨今、一見古くさいような若様とメイドの「身分違いの恋」が感動を誘うのは、主人公二人の誠実なキャラクターの魅力もさることながら、「ヴィクトリア朝の階級社会」が物語の背景として自然にとけ込んでいるから。

何気なく読み進めていくうちに、自然と物語に引き込まれて、4巻ラストのエマの感情の噴出に、がつんと一撃。

お勧め。

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SFのこと(その7)

SF漫画といえば忘れてはいけない、「萩尾望都」。
あ、竹宮恵子もそうですね。何作か読んだのですが、萩尾望都ほどは惹かれませんでした。
SFというには微妙なジャンルだけど、『天馬の血族』(全24巻 角川書店)は面白かったな。

『百億の昼千億の夜』(秋田書店)とか『ウは宇宙船のウ』(小学館)とか。
前に書いたとおり、最初の出会いは原作付きのもので、これもとても好きなのですが、これはそれ以前に読んだ原作の印象がとても強くて。ブラッドベリは短編なのでまだ漫画にしやすいと思うのですが、原作『百億の昼……』は、早川文庫で1.5㎝超の厚みがある本で、しかも多神教と一神教という大きなテーマを持つ作品です。これを漫画として面白く読ませる力量に、ただ感じ入るばかりです。
小説を漫画という手法で再構築することにみごと成功したのは、あの重厚で長大な物語を深く読み込んで自分のものにしたからこそなのでしょう。
すばらしい漫画家という以前に、萩尾望都はすばらしい読み手なのだということに、私は今この文章を書いていて気が付いたのですが、漫画をお読みになった原作者はどのような感想をもったのでしょうか? 何処かで読んだ気がするのですが、どうだったかなぁ?

萩尾望都作で私のお気に入りは
『銀の三角』(白泉社)
『マージナル』(全5巻 小学館)
それぞれ良くて、優劣を付けることはできません。

『銀の三角』は、時間を空間を行きつ戻りつ繰り返しながら、時間の縺れを特定し、それを解くという話し。
明確なモチーフがあるのに、カノンのように定格の演奏というよりは、ミニマムミュージックのような偶然性の繰り返しで奏でられる現代音楽のよう。油断をすると自分が何処にいるか見失ってしまい、その足下の不確かさが何故かとても心地という、なんとも不思議な物語。

『マージナル』は、母と男性のみで構成される社会の話し。
これを読んだのは比較的最近です。
丁度、同じようなテーマでオリジナル小説を書いていた頃で、友人に『マージナル』に似ていると言われて、その時はその感想を流してしまったのですが、後に無自覚に『マージナル』読んでしまったら、自分の書いている話しの不出来さに気が付いて脱力してしまったという思い出があります。
男女差の根本には、女性の「産む性」という肉体の差異の問題があって、この根本がなくなった時に人間の社会は如何に成り立つのだろうか、というしょうもない疑問を今でもたまに考えます。
私がアキラとヒカルが対等であることにこだわることの根底には、実はそんなことがあったりします。が、これを説明するのは、もう数段階説明をしなければならないので、それはまた気が向いたらということで。
そして『大小アキヒカ』がああいう話し(ヒカルの性別不明というあたり)なのは、元はリクエストなんですけど、それを楽しんで書いているのは昔の名残だったりします。

次点のお気に入り。
佐藤史生『ワン・ゼロ』(全4巻 小学館)とか、川原泉『ブレーメン2』(既刊4巻 白泉社)とか。
(川原泉はデビューの頃~別冊花とゆめに掲載された第1作も読んでいたりして~から大好きで、『甲子園の空に笑え』とか『空の食欲魔神』(共に白泉社)とか初期の頃の方が寄り好きかな。「かっこでくくれば同類項」とか「あのの位地がが違う」とか、名言が沢山!)

今一番の注目は、菅原雅雪『暁星記』(既刊4巻まで 講談社)
日本の縄文時代のような狩猟社会で、古い慣習を捨てて周辺の村の統合を目指す「英雄」の物語。
一見異世界ファンタジーの構成を取ってはいますが、私はSFだと思っておりました。途中で出てきたSF的仕掛けに「あっと驚く」(編集部は確かそう煽っていた)よりも、定番なストーリー展開に、ニヤリ。
シャーマンな世界とSF的設定が、これからどうリンクして物語が展開するか、とても楽しみ。

最近読むのは、ヤングアダルトレーベルが多いのだけど、やはり早川文庫のような正統派SFも愉しい!
リアル拙宅の本棚には宝の山が眠っていたから、また書くのに詰まったら本掘りして堪能しよう!

『SF』の項、これにて閉幕。

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SFのこと(その6)

何処までも続く一面の小麦畑。19(ナインティーン)の髪の色。

小麦畑を見るたびに『OZ』のラストを思い出します。モノクロの画面なのに不思議ですが、私はこの先ずっとあの黄金色を思い出すのだと思います。

樹なつみ『OZ』(全4巻、白泉社)
『イティハーサ』と並んで、とても大切な漫画です。
誤爆によって始まった核の応酬とその後にやってきた核の冬を乗り越えて、小国家が台頭し始めた北米大陸が舞台。
タイトルの『OZ』は、核戦争前の科学技術を保つという伝説の科学の都。
主人公3人は、この『OZ』を探しに旅にでます。。
特A級の傭兵ムトウは終わらない戦争の閉塞の中、『OZ』に平和の夢を託します。
フェリシアは、純粋培養された天才科学者。行方不明の兄が『OZ』にいるとの噂を耳にして、『OZ』を探しに旅にでます。
19(ナインティーン)は、フェリシアを迎える使者として『OZ』から遣ってきたアンドロイド。狂ったプログラムが修正され、人間になることを夢見て、『OZ』に向かいます。
三人は反発しあいながら共に旅をし、『OZ』に辿り着きます。
しかし、『OZ』は夢の都ではありませんでした。
それでも彼らは『OZ』で夢を叶えるのです。「突出した科学は人の心を狂わせる」ことに気が付いた彼らは、『OZ』を破壊することを決意します。
その長い旅の中で、フェリシアは兄と再会し、家族に対するコンプレックスを乗り越え、自分を見つけます。
19はプログラムの呪縛から逃れ、人としての意志を持ち、『OZ』と『OZ』の所産である自己を葬り去ります。19は望み通り、人になったのです。
ムトウは小麦を手に入れます。おそらくそれは平和で安定した社会の礎となる農業の再生を意味しているのでしょう。

夢は『OZ』によってただもたらされ、叶えられるのではなく、自分の手で掴み取って、ようやく実現するのです。
多くの命の上に成り立った辛い彼らの旅の終わりが、痛みとともに明日への希望に繋がっていること。それが最後の小麦畑に表現されています。

だからこそ最後のあのシーンが、色鮮やかに目に焼き付いて忘れることができないのだと思います。

『イティハーサ』『OZ』いずれの漫画も、読み応えのある、面白い漫画です。
さーっと読んでも、キャラクターは立っているし、作品世界は綿密に構築されているし、ファンタジーとしての仕掛けやSFとしての仕掛けも、充分に生かされた物語です。
しかしそれだけではなく、「人間とは何ぞや」という哲学的命題と正面から取り組み、作者なりのメッセージが物語として自然に読者に届けられます。
ふと、自分はどうだろうか? と振り返るし、こう在りたい、またはこうは在りたくないという、ある種の志が生まれるのです。
多分、親や先生が言葉で言っても伝わらない何かを、この作品を読むことで擬似的に体感することができるのだと思います。

その漫画という手法を用いた物語の力に、私はただただ感じ入るばかりなのです。

そして余談ではあるのですが、この作品を好きとおっしゃる方に、私は無条件で親近感を感じるのです。ああ、仲間だなぁと。
ヒカ碁好きで、『OZ』が好き、という方を何名が存じ上げているのですが(私がヒカ碁二次創作に嵌って、書き手の方に最初にメールを差し上げるきっかけも、『OZ』でした)、他にもいらっしゃるでしょうか?
きっと一杯いらっしゃるのでしょうね。

相変わらず、長い。
そして、あと一回。
次ぎはもうこんなに力はいってません。好きな漫画ではあるのですが。

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SFのこと(その5)

で、好きなSF漫画。
水樹和佳子『イティハーサ』(集英社ぶーけ豪華本全15巻、早川JA文庫全7巻)
樹なつみ『OZ』全4巻(白泉社)

もうこう記しただけで胸が一杯になってしまいます。
別格。
あ、緊張していたのは、これを小説の部と同じように感想を書こうとしたからか。
今題名を入力して突然悟りました。

『イティハーサ』は超古代の日本が舞台。
主人公鷹野と透(示+古)の暮らす邑は「目に見えない神」の宝物を奪いにきた大陸渡来の目に見える神とその信徒に襲われる。「目に見えない神」は村人を救わず、主人公達は「目に見えない神」とその信徒に救われる。「目に見える神」には、殺害や略奪を善とする神(威神)と、平和と安定を尊ぶ神(亜神)があり、主人公達はこの亜神の一行と共に、神宝と「目に見えない神」の謎を解く旅に出かける。
そんな物語の前半部分は、むしろ超古代ファンタジーという様相を呈しているのですが、最後に主人公が見つける「目に見えない神」の謎と、鷹野ととうこの役割がSF的(作者はずっとこれはSFだと主張されていました)。
最後に種明かしされた作者水樹和佳子がこの作品に託した時間と空間の長さ・広さに、ただただ圧倒されるばかりでした。
物語は目に見える神々が善神・悪神と分けられたことに象徴されるような善悪の単純な二項対比の中で、人間の本質は何なのかを問い続けます。
誰かを守る為の殺害は善なのか悪なのか? 自分を守るために殺害は善なのか悪なのか? 自己を捨てることで守られる平和が果たして善なのか悪なのか?
善であり悪である。善でなく悪でもない。その狭間にあり、どちらにも惹かれるからこそ人間なのだと、そこに何らかの救いがあるのだ、と物語は閉じるのです。

掲載誌『ぶーけ』は、事実上廃刊されてしまいました。
少女漫画雑誌でありながら、『イティハーサ』のような漫画を連載する少々毛色の変わった雑誌であったのですが、あるとき一般的な少女漫画雑誌へ編集方針が転換し、水樹和佳子を始め、水星茗とか夢路行とか私の好きだった方は軒並み切られてしまいました。『イティハーサ』の最後は書き下ろしで出版されたといういわくつきです。
『ぶーけ』自体はこの編集方針転換にも売り上げを伸ばすことが出来なかったのか、結局廃刊に至りました。(あの時は本当にびっくりしました。こんなメジャー雑誌でも廃刊しちゃうんだって)

その後、水樹和佳子は早川書房に拾われて、『イティハーサ』ほか『月虹』等SF系の著作を中心に早川JA文庫から復刊したわけですが、途端SF畑での『イティハーサ』の評価が高くなって、ジャンルの壁の高さを実感した次第です。
『イティハーサ』は10年間、『イティハーサ』としてそこに在り続けていたのに。

またなが~い。とほほ。
『OZ』はまた次ぎに譲ります。

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